目次
論文審査会とは?
私は、これまでの人生で3回(日本の修士課程、ハンガリーの修士課程、日本の博士後期課程)、大学院の論文審査というものを受けてきました。
論文審査会とは、修士号あるいは、博士号を授与してもいいかどうかを審査する会です。
論文審査は、日本だけではない、世界の大学院で実施され、大学生が乗り越えなくてはならないビッグイベントです。
、論文審査会において、論文執筆もさることながら、プレゼンスライドを如何にして作り込むかが非常に重要になってきます。
まずは、前提として、審査会について少し説明を加えたいと思います。
前提:修士課程と博士後期課程の審査会はどう違うのか?
私が、どんな風に論文審査を経験してきたのかを下記にまとめていきたいと思います。
【修士課程】
1.論文審査会に至るまで
日本とハンガリーともに共通して、大学院側から審査会の申し込み期限の案内が来ますので、その時期になったら論文審査会を受けていいのか否かについて指導教員(主査)の許諾を得ます。
そして、指導教員が可の評価をした後に、論文審査会に挑みます。※
※ハンガリーの大学院では、3名(クラスメイト28人中)の大学院生が主査の許可が出ずに留年しました。理由は、論文のレベルが修士論文の基準に達していないためでした。
ですので、日頃から指導教員とコミュニケーションを取って、論文を完成させることが大事です。
2.審査会
審査会は、主査(指導教員)と副査2名(他領域から選出された先生)の計3人から構成されます。ちなみに、ハンガリーの大学院では、外部の大学教員や企業で勤務している専門家などを副査として大学院生の方から希望を出すこともOKでした。
大学院毎に規定が定められていますので、事前に確認することが必要です。
流れとしては、決められた時間内にパワーポイントスライドを用いたプレゼンを行い(15分程度)、それをもとに先生方からの質問に答えたり、ディスカッションを行います。
審査会を経て、学位の授与の合否が決定します。
※ちなみに、ハンガリーの大学院では、これまで大学院で学んできた主要科目の知識を問う卒業試験(Final Exam)というものがあり、修士課程は卒業試験と論文審査の2段構えで修了判定をするというシステムでした。
大事!修士課程の場合は、論文を適切な手法でデータを収集し、論文として先行研究を用いて論理的に一貫性をもってまとめられているかということがポイントなのではないかと思いました。
【博士後期課程】
1.論文審査会に至るまで
基本的には、修士課程と同じ流れです。
2.審査会
審査会は、主査(指導教員)と副査2~3名(他領域から選出された先生または、外部からの先生)から構成されます。
修士課程よりも、副査の人数が若干多くなる場合もあります。
何より、修士課程の時と比べて審査がかなり厳くなります。先生方の博士号を授与する基準に達した研究なのかという鋭い視線を強く感じます。
博士号は一人前の研究者としての第1歩と言われていますので、先行研究を踏まえての論文の位置づけや、論文の新規性がどこにあるのか、論文の方向性を示す理論的枠組みがしっかりしているのか等々…あらゆるポイントで評価がなされます。
私の終了した大学院では、20分でプレゼンをすることが求められました。
当初は、修士課程のプレゼンと同様に、構成をしていったのですが、データが膨大な分、インパクトのあるプレゼンにすることが困難でした。
そこで、試行錯誤をした結果、博士後期課程では、論文審査のプレゼンスライドの作り方において、戦略があることを身をもって学んできました。それが次の通りです。
これを意識することで、審査員の先生方に納得してもらえる近道になるかと思います。
本題1:自分の論文の売りを明確にする
大事!! まずは、自分の論文の売りは何なのかについて知ることが大事です。つまり、審査員の先生方の心を打つポイントはどこなのかというところです。=苦労したポイントをスライドの中でアピールしましょう。
例えば、私の場合ですと、緻密さが売りになりました。
というのも、丁寧にプレテストを繰り返し、修正を繰り返しながら調査票を作成し、本調査を行い、新規性のあるデータを得ていったというところがポイントになりました。
そこで、方法論のところにスポットライトを当てました。通常、学会発表だと1枚のスライドで説明がなされることが多いのですが、私は3枚ものスライドを使い、データ収集のプロセスの表や、何に失敗をして、どの箇所について根拠性をもって修正をかけていったのかという説明を行いました。
その失敗のプロセスを省いてしまうと、淡々としたプレゼンになってしまうため、敢えて苦労した作業の過程を示していきました。そうすることで、苦労して作成した調査票から得たデータの価値がより伝わります。
学会発表の場ですと、やはり結果の部分、新規性というところが知りたいという聴衆が多いかと思います。しかし、博士論文の審査の場合は、結果だけでなく、博士論文が完成するまでの過程も含めて審査がなされていることをおさえることが重要です。
その分、時間の兼ね合いから、結果の全てを示すことは時間的に出来なかったため、新規性の高い順に選定をして示していきました。
人によっては、アピールポイントが違ってくると思います。
私の先輩Aさんの場合だと、母集団自体が少ない集団のデータを丁寧に集めていって、貴重なデータを得ていったというところがポイントでした。この場合だと、全国に〇名しかいない中の〇名のデータをどういうアプローチで得てというプロセスところの説明が丁寧になされていました。
本題2:考察のスライド中に、博士論文のオリジナリティのある要素を散りばめる
大事!考察の部分は、自分の論文の新規性をアピールできるチャンスだと捉えましょう。
先行研究と比較して自分の研究から得られたデータはどうなのか、この部分は共通しているけれど、ここの部分は違っていた。それについて、どのように考えるのかなど、自分のデータの新規性を散りばめましょう!
まとめ
博士後期課程の論文審査会が何を評価しているのかを知ることが重要です。そして、審査員の先生方が心を動かされるようなプレゼン作りを目指しましょう。
そのためには、自分の研究の売りと新規性を知ることが大事です。