事例研究の執筆に取り掛かる前に、論文の組み立て方をおさえておくことが大事です。
事例研究の意義は、臨床から得られた新しい知識を普及させるところにあります。
下記に論文の構成と書くべきポイントについて、まとめています。
はじめに/序論=なぜ、この研究を始めたのか?
第1パラグラフ:研究のトピックの状況について書きます。(データや先行研究から得られている知見を用いて記述しましょう。)
世界的な状況 例:米国を中心に補完代替療法のエビデンスが構築されている。
⇒ 日本の状況 例:日本では、補完代替療法について徐々に認識され始めた段階にある。
⇒ 身近な医療・患者の状況 例:痛みを抱えている患者に対する疼痛コントロールが困難である現状がある。
事例研究なので、患者の状況を中心に記載しましょう。
ポイント
「逆三角形」型の思考のイメージで、広範なテーマから論文に直接関連するテーマへと焦点を絞るような書き方を意識しましょう。
第2パラグラフ:第1パラグラフを踏まえて、現在、何が問題となっているのか、何が課題なのかについて記述しましょう。
⇒そこから、研究の意義を明記しましょう。
例)補完代替療法の1つ、マッサージは患者の疼痛を緩和することがエビデンスとして示されている。しかし、患者へ活用されていないことが課題である。
第3パラグラフ:研究目的を記載しましょう。
・1文でシンプルに書きましょう。
・基本的に目的は1つです。
例)よって、本研究では、疼痛を有した患者に看護援助としてマッサージを実施し、その有効性を評価することを目的とした。
◆執筆のポイント
まずは箇条書きにして、ストーリーラインを決めましょう。そこから、文章に肉付けをして、書いていきましょう。
方法=何をしたのか?
1.対象
・どのような対象に実施したのかを丁寧に記載する。
・人数なども明記する
・但し、個人情報が特定できないような書き方をすることが大事です。
例)○○病棟に入院中のがん性疼痛を有している患者△人
2.データ収集方法
・具体的に記述することを意識しましょう。
3.データ収集場所・期間
データ収集場所:○○病棟
データ収集期間:令和〇年〇月〇日(曜日)~令和〇年〇月〇日(曜日)の平日△日間
4.倫理的配慮
・患者の同意のもとに介入を行った旨を記載しましょう。
・患者の匿名性を保つために、実施したことを記載しましょう。
例)記録物や論文には個人が特定できるような情報は記載せず、プライバシーの保護に努めた。
患者が特定される可能性のある情報は、絶対に開示しないようにしましょう。
結果=何が分かったのか?
1.事例紹介
診断名や、既往歴、家族背景、これまでの経過等について要約して記載しましょう。
2.実践
実践したことを記載していきます。
◆まとめ方のポイントと例◆
大事なことは、根拠性のある枠組み(理論やモデル、定義など)に沿って、事例をまとめていくことです。
【例1】看護問題に即して記述していく
♯安楽障害
長期目標
短期目標
実践
患者の反応
・客観的データ:呼吸数、血圧、看護師などの第3者からの評価、カルテ情報、スケール等
・主観的データ:患者の発言
・患者とのやり取りの一場面を切り取ってまとめる:その際、理論・モデルを用いると尚よい
例:症状マネジメントモデルなど
【例2】定義に即してまとめる
痛みには4つの側面(1. 身体的、2. 精神的、3. 社会的、4. スピリチュアル)があります。
それに即して事例をまとめていきましょう。
1.身体
2.精神
3.社会
4.スピリチュアル
介入前後でどのような変化があったのかをまとめる。
考察=どういう意味があるのか?
考察は最も、記述するうえで難しいとされるセクションです。
結果に、あなたが解釈したことを記載し意味づけを行っていきましょう。
1.介入の評価
例えば・・・
同じような先行研究と比較して、同様の結果が得られているのか、それとも異なる結果が得られたのかを記述し、考察をしていく。
同じような結果であった場合、介入の有効性を強調できることを述べ、何が要因だと考えられるのかについて記載していく。
マッサージの介入であれば、介入時間の長さ、使用物品の影響(アロマを用いたこと)、技術(タッチングの効果があったためでないか)…等について記述する。
異なる結果であった場合、介入の効果が得られないのはなぜかについて記載していく。
患者の精神状態に左右されたのではないか、時間が短すぎたためでないか等…
教科書や、先行研究を用いながら記述をしていきます。
2.今後の実践に向けて
今後、看護実践をする上で、どう活用していけばいいのかについて書くと尚、いいでしょう。
3.研究の限界
今回の看護援助の限界についても記載しましょう。
例:限られた時間内での実践であった等。
結論=何を学んだのか?
重要な点について、簡潔に記載しましょう。
いくつか結論が示された場合は、箇条書きにするなど、読み手に分かりやすく伝わるように工夫しましょう。
例:マッサージの介入は、がん患者の疼痛緩和に有効であるだけでなく、家族との関係性においても活用できることが示された。